世界一素敵なバンド

二十歳の頃酒屋に勤めていた。
ディスカウントショップだった為結構忙しかった。
店内では有線が流れていて、僕はそこで色んな歌を知った。
パフィの「これが私の生きる道」や、山崎まさよしの「Onemoretimeonemorechance」が好きになった。
月一回有線放送の会報みたいなのが店に送られてきていた。
ある月の会報を僕はいつものごとく、暇を見つけてはパラパラと捲った。
とある新人のデビュー記事を見つけた。
四人の顔写真が載っていて、「針にかかった魚が自由を求めるように」という曲名でデビューするとのこと。
作詞作曲は近藤金吾と記事があり、四人の顔写真に名前は付いていなかったが僕にはこの中の誰が近藤金吾であるかすぐに分かった。
なぜ分かったか?
分かったから分かったとしか説明のしようがない。近藤金吾がすぐに分かった。僕には近藤金吾がすぐに分かった。
僕はタイムスリップランデブーのファンになった。
彼らの音楽が世に認められなくて一体何が認められるというのだろうと。
とにかく歌詞もメロディーも僕にとって完璧だった。
サードシングルの二曲目を聞いた時、山田かまちのやりたかった音楽とはこのようなものではなかったか、と思った。誰にでも愛される曲。このバンドにはかまちがいるとさえ思った、本気で。
四枚目のアルバムは僕の中で世界ランキング一位にいる。
このアルバムはつま先から頭のてっぺんまで大好きだ。歌詞の一字一句、音符の一つ一つが大好きだ。
最高に素敵なアルバム、最高に素敵なバンド。
あれから十五年。タイムスリップランデブーを知る人は少ない。