サルトルなら国民栄誉賞ももちろん拒否した

何年か前のキャッチコピーで
「世の中には前田日明がたりない」
というのが新聞か何かに載った。
まさにその頃を表現する見事な一言だった。確かターザン山本もこのキャッチコピーを絶賛していたような・・・?。
これは大きく分けて二つを指していた。
一つは今のこの時代に、前田のように怒れて、悩めて、こだわって、何かのために真剣に身を捧げて、そういった人間が、そういった精神が、そういった日本人が足りないと。
そしてもう一つは、格闘技ムーブメント全盛時にあってそのムーブメントの基盤を創ったとも言える前田日明が、格闘技の表舞台にいないことを指した。前田がからめばさらに面白くなるのに、と。
「世の中には前田日明がたりない」
素晴らしいキャッチコピーだと思う。

これも何年か前の話。マラソン高橋尚子選手がオリンピックで金メダルを取り、国民栄誉賞を受賞した。それに対して三大会連続でメダルを獲得していた柔道の谷亮子の方こそ貰うべきだと意見が出て、世間が騒いだ時があった。国民栄誉賞内閣総理大臣が与えるものであり、それを与えることにより注目され内閣支持率が上がる。総理の人気取りであると批判の声。
そんなすったもんだを嘲笑うようなキャッチコピーが新聞に載る。当時バーリトゥードで無敵軍団とされていたグレイシー一族、その一族を次々と撃破し格闘技界の英雄となっていた桜庭和志。ホイス、ホイラー、など負けなしの選手を独自のスタイルで撃破し、格闘技界の英雄から日本の英雄へと。そして次大会の宣伝広告のキャッチ。
「総理、この男にも国民栄誉賞を」
あの頃の桜庭はまさに主人公でした。
ただ全く関係ない話で恐縮であるが、サルトルならば国民栄誉賞ももちろん拒否したことだろう。