オンザロード36「神々が見た景色を見に行く」

おはよう。昨夜から隣りに止めてあった白い車のオッサンから、さっき急に話しかけられた。五〜六分の立ち話。オッサンは大阪のオッサンで生まれは島根、夏にはよく北海道に遊びに行くらしい。ささやかな出会い。ささやか過ぎる出会い。もう一生オッサンとは会うことはないだろう。彼の死にさえ、僕は気付かないのだ、当然。
そのあと国見が丘にやって来た。早朝六時。なぜこんなに早いかというと、ここでは雲海が見られるのだ。ただその日は見られなかった。本当のはっきりとした雲海は、年に数度しか見られないと、地元の人が教えてくれた。秋の寒い日には続けて見られるとか。雲海は見られなかったが、それでも素晴らしい景色だった。神々の見た景色とされ、そこには神様達の銅像があった。
子どもの頃読んだマンガ「神様はサウスポー」で、初めて雲海というものを知った。それから、ずっと雲海を見てみたいと思っていた。が、今回それは叶わなかった。が、いつか絶対に見てやると、拳をギュッと握りしめる僕だった。
そして高千穂峡までやって来た。大分走った。
そのあと僕は地獄へと向かった。、