出来の悪い弟は行方不明になった

横浜にいる友達が行方不明になっていた。アパートの家賃を三カ月滞納していたらしく、大家がアパートに行って見ると、カギは開いていて部屋も普通に物が置いてあり、でも本人はいない。携帯はもちろん止められていて、連絡もつかず、実家に電話が入ったとか。大家曰く、テレビのスイッチも入るような状態でカギも掛けずにずっと留守とはオカシイということ。経験上いうことか。
僕ものその話を聞いていて、「オカシイな」と嫌な予感がした。それだけ金がなければ、闇金にでも手を出しかねない。そうなれば引っ張られかねないすっよね、たこ部屋みたいなとことか。愛知の方にオイシイ仕事があるとかってその話に乗っかって騙されたとかも聞いていたし。
田舎の母親は、涙を流して心配したらしい。父親は「死んでいたらそれはそれで仕方がない」と言って母親の涙を助長したとか。僕の耳にもそれは入ってきて、すぐに携帯を鳴らそうとするも、それはやはり鳴らずに事務的に女性が言葉を発するのみ。どうしたらいいのか、どうもしようがない。


そして無力な時が少しだけ流れた。


そして本日僕の携帯が鳴った。僕の母親からのメールだった。
「○○○は元気。祖母が亡くなり今家に帰ってきているらしい。ご飯を三杯食べたとのこと」
聞けば友達の母親は、彼宛てに手紙を書いたとのこと。友達は、時折アパートには帰って来ていて、それで手紙を見て連絡を寄こしたとか。公衆電話からで、あまり長くは話せなかったとのことだが、母親がどれだけホッとしたことか、それは想像に難くない。
彼は僕の兄弟のようなものだ。本当の親友であり、そして兄弟のような、双子のような。まぁ、出来の悪い弟といった感じではあるが・・・・。