オンザロード76「この旅のクライマックスと名付けられた場所」

朝目覚め尾瀬へと向かうことに。小雨がぱらつき霧がかっている。
この日僕は、この旅のクライマックスとも言うべき出来事を迎える。この旅がもしも一つの物語ならば、間違いなく一番のメインシーン、まさにクライマックス。僕はあの歌で有名な尾瀬へとやってきた。着いた時点でまだ雨はぱらついていた。ちなみに僕が着いたのは尾瀬の入口であって、決していわゆる尾瀬ではない。それはここクライマックスにおいてかなり重要なこと。僕が今立つ場所は尾瀬の入口である。
ツアーかなんかで来たのか、おばちゃん軍団も尾瀬の入口にいた。一人いる僕に一人のおばちゃんが話しかけて来た。
「ここからは車は入れないみたいよ。歩いて行かなければならないみたい。私たちもこれから歩いて行くとこなの」
おばちゃんは確かにそう言った。
「はぁーそうですか」
僕はそのように答えたと思う。まだ何も知らなかったのだ。僕も、おばちゃん軍団も。知っていればこんな呑気な会話はなかっただろう。さぁ行こうか。僕は本当の入口に立つ。目指すは尾瀬沼。あの歌の中で、もっとも有名とも言えるあの部分。

水芭蕉の花が咲いている
夢見て咲いている水のほとり

それはもちろん尾瀬沼のほとりに咲く水芭蕉のこと。おばちゃん軍団はまだモジモジしている。水芭蕉の花を見たいとハシャギながらも、尾瀬沼まで7,5キロの看板。躊躇うのも仕方がない。でも実際は違った。7,5キロという距離がの問題ではなかったのだ。