高校三年生の僕

高校生三年生の夏、失恋の悔しさから僕は友達の家を訪れ、バンドを組もうと突然言った。その友達も少し前に失恋していて、部屋に閉じ籠もりがちになっていた。僕たちはバンドを結成した、負けん気から。
その友達がドラム、僕がヴォーカル、ギターとベースに悪友を誘い、もちろんブルーハーツのコピーをやることにした。
バンド名は、ベース担当の悪友と英語の授業で席がとなりになるので、その時二人で決めることにした。僕はフランス語で存在理由を意味する「レゾンデートル」が良いと言った。悪友は「デビルス」が良いと言った。デビルスって何(苦笑)?という顔を僕がすると、悪友は「じゃぁゴットデビルス」と言った(汗、また汗)。そういう問題じゃないんですけど。凄いセンスです、ある意味凄すぎです、と僕は叫びたい気持ちを抑えた。
結局バンド名は僕が考えたレゾンデートルに決まり(ベースの悪友は最後まで不満そうだった)、そうして僕たちのロックはスタートした。
初ライブの前日、公民館を借りて練習することになっていたのだが、大雪で公民館が埋まっており、しばらく雪かきをしたのを覚えている。少しずつ公民館の入口に近づきながら、なぜか今生きている事をはっきりと実感していた。まさに青春だった。青い春ではなく、白い冬ではあったが。

あれから17年、僕はここにいて、妻がいて、子供がいて、新しい家があり、仕事があり、ある程度の免許や資格があり、ある程度の貯金があり、ほんわかとした幸福がある。いま僕は幸せだと思う。
それでも時々思う、あの時の僕は今どこにいるのだろうと。どのあたりにいるのか。そして今のこの僕を果たして許してくれるだろうかと。