本の扉を押した日

僕が本読むようになったのは、高校生になってからだ。小学生の時は読書なんて考えられなかったし(本を読む同級生を変な奴と思っていた)、中学生の時も一冊も読んでいないはず。高校に入学してからほんの少し、いわゆるタレント本というやつを読むようになり(当時、顔を知らない人の本は入り辛いなぁと思っていた。だからタレント本だった)、その延長で、ある一冊の本に出会う。
「ガラスの天井」、辻仁成のエッセイだ。
当時から、辻仁成のことはエコーズのヴォーカルと知ってはいた。エコーズの「ジェントルランド」をカセットテープで持っており、擦り切れるほど聞いていた。そのヴォーカルが「つじじんせい」、変わった、それでいてかっこいい名前だなという印象を持っていた。そのことから、たまたま立ち寄った本屋で目に付いた「ガラスの天井」を、僕はタレント本の感覚で手に取った。これが僕の読書人生の始まりだった。
「ガラスの天井」は高校生の僕にとって、途轍もなく刺激的だった。辻仁成にとってジャックケルアックの「路上」がそうであったように。
「ガラスの天井」を知らなければ、僕がこれほど本を読むことはなかっただろう。そうすれば僕の人生はもっと違ったものになっていただろう。本の威力って凄いと思う。けれども本の威力を強烈なものにするのも、また読み手である。本と読み手のスパークが、人生を大きく揺り動かす。

「ガラスの天井」には、歌もある。僕はこの歌を、バンドの練習の時、発声の曲に選んでいた。