格闘技の流れは速過ぎて

僕が高校生の頃、船木誠勝鈴木みのるが中心となり、パンクラスというプロレス団体が旗揚げされた。パンクラスとは従来のプロレスとは違い、格闘技色の強いいわゆるU系の団体だった。プロレスラーは普通は筋肉ムキムキで体重もできるだけ多くしようとするものだったが、彼らはへビー級でありながら、体重を90キロ程まで絞り込み、これがへビー級のベスト体重だと言い放った。当時K-1が人気絶頂で、最強を誇っていたピーターアーツや、アーネストホーストらが90キロ前後であることをその理由に挙げていた。一番動ける体重であると。しかしその後アーツやホーストは体重を10キロ以上も増やすことになるし、K−1もボクシングのヘビー級もどんどん大型化が進んでいく(シュルトクリチコ兄弟など)。実際数年後彼らも体重を元に戻すことになる。・・・・そういったことがいくらかあった。新しいことを始めようとしていた分けで、手探りの部分が大きかったし、彼らもまだ若かった。UWFを進化させたというのを見せたかったのが一番大きかっただろうが。だからそう言った間違いが時々あったと思う。
けれども一度、かなり凄いと思った発言がある。船木が格闘技通信のインタビューで話していたことだが、異種格闘技戦は近い将来なくなると言ったのだ。ルールで揉めることもなくなり、皆統一のルールで闘うことになると。今でこそプライドもあったし、UFCがあり、それは当り前のことだが、当時は「まさか、そんなことない、また理想を簡単に言っちゃって」っていうようなものだった。プロレスラーは素手で、キックボクサーやボクサーはグローブをつけて、柔道家は道着を着て、寝技は何秒までとか、掴みは何秒までとか、ルールで雁字搦めだった。猪木の時代から続いてきた、それが当たり前のことだった。それが船木が言ったように、あっという間に統一ルールの下で、K−1のチャンピオンや柔道の金メダリストらが闘うこととなった。それがゴールデンで放送されるようになり、大晦日には紅白歌合戦に迫るほど視聴率を取るまでになった。時代は早く、そして速く進んだ。そしてあっという間に格闘技ブームはどこかへ行ってしまった。