超多忙酒屋物語リターンズ

二十歳頃に勤めていた酒屋には、二人の子供がいた。当時で小学二年生と幼稚園の年長だったような。兄の方はとにかく我儘だった。店から普通にお菓子を取ってきて食べていた。他の店に行っても、普通に取ってきてしまうのではないかと、僕はちょっと心配だった。社長がいくら怒っても、完全シカトだった。小学二年生にしては、大人びていたのかもしれない。
弟の方は、これまた強烈キャラだった。ある日、鼻になんか詰まっているなと見てみると、砂が鼻穴いっぱいに詰められていた。誰の言うことも聞かなかった。幼稚園の先生もかなり手を焼いていたらしい。言葉も今思えば片言で、その後養護学校に入ったとか。この子の顔が、ちょっと家の長男と似ているような・・・・・(汗)。
高校生のアルバイトは、よく倉庫から酒を盗んで帰っていた。缶チューハイとかならカワイイ方で、ウイスキーとかブランデーとかも当たり前に持って帰った。一度なんかドンぺリを盗んで行こうとして、さすがに止めたことがある(在庫が少ないためばれ易いのだ)。基本的に僕ら従業員は黙認していたが、前出しのヤンキー従業員が、結局最後は社長にチクった。
僕らが別にそういったことをあまり注意しなかったのにも、それなりの理由がある。酒屋はかなり儲かっていたと思われるが、僕らは少ない給料で働いており、皆不満だった分けだ。その酒屋の事務所の二階には、誰も上がったことがなく、そこにはタンス貯金で一億はあると言われていた。奥さんが時々上って行っては、Tシャツとかを卸してきて僕らにくれた(焼酎名とか入った奴)。僕らは時々従業員で、その部屋はどうなっているんだろう、なんて話したりした。社長と奥さん以外は上って行ったのを見たことがなく(うん、確かに子供もおじいちゃんも行かなかったなぁ)、僕らの想像は膨らんだ。誰かが五億位あるんじゃないかというと、また誰かが実は寝たきりのおばあちゃんがいるんじゃないかと言い出した。高校生のアルバイトが聞いたこともない動物の鳴き声を聞いたと言い、事務員がいつもお昼前にトントントンと音がすると言った。何があるんだろう・・・・・すべては謎のまま、僕は酒屋を辞めてしまった。
今度機会があったら忍び込んでみたいと思う。生きて帰ってこれるかは分からないけれど・・・・・。