別に鳴かなくてもいい

若かりし頃、地元の寿司屋で友達と二人で飲んでいて、例のホトトギスの話になった。「お前の場合は鳴かせて見せよう、だよな」と友達は僕に向かって言った。僕はそれには「う〜ん?」という感じで頷けず、否定できずと言った感じで・・・・。友達は「おれは完全に、殺してしまえだ」と言った。彼は数年後、極道になった。
酔いも冷めた次の日、僕は一体なんだろうかと思案した。もちろんホトトギスの話だ。信長は「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」。秀吉は「鳴かぬなら鳴かせて見せようホトトギス」。家康が「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」。友達は僕に、秀吉だろうと言った。だが僕にはそれがしっくり来ない。そしてしっくり来るのはなんだろうかと。・・・・・・そして思い当たった。僕の場合はこれだ。
「鳴かぬなら別に鳴かなくてもいいよホトトギス
これだ。しっくり来た。当時の僕。
お前が鳴こうが喚こうが、真実はそこにはなく、真実は常に僕の中だから、お前のどうこうで僕の人生は揺るがない。だから別に鳴かなくてもいいよと。自信の現れた意味ですね。
概念に、既成に、枠組みに囚われない、そんな若者でした、無意識のうちに。