僕の街に大物格闘家が来た

十九歳の頃、月に二回位は格闘技を観に行っていた。そして格闘家を見つけては写真を撮らせてもらったものだ。そのコレクション・・・・ジェラルド・ゴルドー、モーリススミス、平直行、熊谷直子、前田憲作、立嶋篤史などそうそうたるメンバー。番外編で行けば、谷川貞治、宮田アナなど。
そんな中でも数年前、僕の自宅から10キロほどの地点に、ある大物格闘家が登場し講演会、そこで一緒に撮ってもらった写真は一番の宝物だ。彼の試合は一度仙台で、対ウイリー戦を観戦したことはあったが、まさかこんな間近で、しかも講演会の後のちょっとしたパーティーでは会話までしてしまった。その大物格闘家とはもちろん、前田日明だ。
僕は初めこの講演会に兄貴に誘われ、けれども平日当然仕事で、「チョット行くの厳しいかも」と答えたものの、僕の兄貴に「船木じゃないよ、前田来るんだよ」と言われ、その意味を深く噛みしめる僕。僕の街に前田が来るのに、僕が行かなくて誰が行くんだろうと、僕という人間にしては考えられぬ仮病で、急きょ講演会参戦となった分けだ。
それにしても兄貴の言葉の意味は、僕にはよく染みた。別に船木を軽んじた言葉でなど決してない。格闘技ファンの僕に、格闘家が来るだけでも大問題なのに、「あの前田が来るなんてもはや俺ら兄弟の為に来るんじゃね?それなのに弟よお前は行かないのか」的な・・・・意味かな。
でっ、前田はもちろん大きかったが、あまりにもカッコ良くてビックリした。佇まいはもちろんだがなんと言っても顔がカッコイイっす。
講演会中、僕は少々前田と睨めっこしたが、必死で目を外さない僕、前田も僕の目を見続け、その眼力に僕はだんだん涙目、そしてとうとう目線を外してしまった。眼力で殺されるかと思った。やっぱ一流ってスゴイ。