優しき国でシャープなハートを隠して

小学生の頃、兄貴にダビングしてもらったカセットテープ。ブルーハーツの「ザ・ブルーハーツ」「ヤング&プリティ」「トレイントレイン」の三本は僕の宝物だった。他にもたくさんダビングしてもらっていて、良いアルバムがいっぱいあったが、それら三本はやはり僕の中では別格だった。しかし一本だけ例外があり、それら三本と同等の位置づけをされたカセットテープがあった。それが、エコーズの「ジェントルランド」だった。一曲目からもうメチャクチャカッコいい。何がって、歌詞が。

 歌や夢や愛がなくても くらしていけるけれど
 地下鉄やガソリンがなけりゃ 僕らは生きてはいけない
 いたわりや遠慮がなくても どうにか転がれるけれど
 信号や規律がなければ 呼吸さえもできない

捻くれてますね〜。ブルーハーツと違い、大分捻くれています。それがシニカルで良いのかな〜。よく分かんないけどとにかくカッコ良かった。

 この優しき国の中で その優しさを受けるため
 フリをするのがとても上手な 素直な良い子になろう
 ダメな大人の真似をしよう 仕草や言葉遣いまで
 素直に受け入れた方が この街は・・・ジェントルランド

 良い子が住んでる 優しきこの街
 どんなに溶けても 僕らなら上手くやるさ
 シャープなハートを隠して・・・・

やっぱ捻くれてます。辻仁成にしか書けない歌詞。でもカッコいい。

この頃のラジオかなんかの収録での辻の言葉。来年の目標を聞かれ、
「個人的には1990年代初頭に、芥川賞を取ることです。まぁささやかな夢ですけれども」
誰もが冗談だと思ったことだろう。当時辻は、メンバーがライブ後街へとくり出す中、一人ホテルの部屋で小説を書き続けたという。そして実際に1990年代初頭より少し遅れたものの、芥川賞を受賞している。

辻曰く、アルバム「ジェントルランド」こそがエコーズの代表作であるということ。