ショパンの失恋

ショパンの失恋はよくある失恋だったのかもしれないが、彼を鬱に陥れ、二度と脱出できないまでに打ちのめした。
ジョルジョ・サンドとの別れは悲しみの極致だった。ショパンが絶望の淵にいる時に、サンドは新しい若い恋人と南フランスでバカンスを楽しんでいた。せめてこの別れを、自分と同じように苦しんでいてくれたならば、ショパンも少しは救われただろう。彼女はショパンとの日々を忘れ、ショパンは何一つ忘れたくないのだ。その違いは、彼のこれまでの人生を、全て打ちのめしたことだろう。
そんな経験が僕にもあるし、もしかしたらたくさんの人たちが似たような経験をしているのかもしれない。だから有り触れた、よくあることだよと括ることが出来るのかもしれない・・・・・が、やはり、例え有り触れたことだとしても、それは当人にとっては核ミサイルを発射するほどの大事件だ。大事件というより、その時のその人の全てと言えるかもしれない。
ショパンのピアノはとても繊細だった。その繊細さは、歴史に名を刻んだ、その切ない恋の伝説と共に。