写真を持った休日

十五年も前になるだろうか。僕は唐突に一眼レフのカメラを買った。そして突然に、写真を撮って歩くようになった。風景というよりも、風景の一部を。風景の一部と言うよりも、街の一部、あるいは時の一部を。その写真に言葉を添えて、写真集を作った(手作りのショボイ奴だけど)。その写真集のタイトルが「写真を持った休日」だった。
僕の場合は写真を撮る前に言葉が生まれた。その言葉と共にその写真は記録された。まず言葉ありき、そしてそれに添えられる写真、みたいな感じかな。だが決して頭でっかちなものではなかった。その写真集の中にも記されているが、「写真を持った休日」はまさに僕の行動力の結晶であり、僕の肉体の結晶であった。どこへでも出向いて行き、どの瞬間でも切り裂いて写真に収めた。
辻仁成が言っている「詩は刹那を凍結したもの」。ならば写真はその最たるものではないかと思う。あのカメラを持ち歩いた日々も、たまらなく楽しかったなぁ。今ではカメラもどこへ行ってしまったのか。