オンザロード5「書を捨てよ、旅に出よ」

木曜日、その日は最後の出社日で、明日からは有給の消化が一ヶ月半ほど続くことになっていた。今日は定時で上がり、その後はハイロウズのライブの予定。だが、僕の体調は最悪だった。熱は38度越えていたし、咳は出る、痰は絡む、もう最悪。ライブに行くかすら迷ったが(普通は行かないかな?)、事務員の「行ってスッキリしてきたら」の一声に背中を押され、僕はライブへと行くことに。
それで仲間数名とライブへと行ったのだが、なんと会場はガラ空き。ブルーハーツ時代から何度も彼らのライブに来ていたが、こんなのは初めて、というか満員じゃないのすら初めてだった。15列目位かな?イイとこ20列目位までの入り。それでも(それだから?)ヒロトと真島は気合が入っていた。それでもやはり、客席の声は少なかったなぁ。
僕はハイロウズと共に歌を叫びながら、もう倒れる寸前だった。辛い、非常に辛い。事務員の「スッキリ」の言葉は、もうこのままスッキリ死んでしまいます、となってしまいそうなほどに。
そして出発予定日へと日付は変わる。金曜日、その日はずっと家で寝ていた。とても今日は無理・・・・。
土曜日、この日も僕は家で寝ていた。熱も下がり、昨日よりはマシになっていたが、ここで出発してすぐにダウンではシャレにならないと、出発中止。
そして日曜日、体調は大分回復しいていた。まだ咳は少し残っていたが、二日も延ばしてしまった出発を、もうこれ以上延ばすわけにはいかない。こうやって人はおじいさんになってしまうのだ。こうやってどこにも出発もしないうちに、誰もが老人になってしまうのだ。僕は今日、出発することに決めた。
家族に今日行くことを告げる。そしたら少しして、部屋のドアをノックする音。ドアを開けると兄貴で、あるものを手渡された。何かと思ってよく見てみると、それは・・・・警棒だった。伸縮性の、ビーバップでトオルが持っているアレ。兄貴曰く「○○人とかは簡単に人を殺すから気をつけろ」とのこと。自己防衛のために使えということか。僕は戸惑いながらもそれを素直に受け取った。
それで昼前、さあ出発しようかという時に、携帯電話が鳴った。着信を見ると極道の友達から。電話に出ると「渡したいものがあるからチョット待っててくれ」とのこと。・・・まさかあなたも警棒???
で、一時間ほどして極道の友達が到着。少しだけ身構える僕に、彼が差し出したものは交通安全のお守りだった。聞けば急いで地元の神社まで行って貰って来たとか。警棒ではなかった安心もあったが、僕はそれ以上に感動してしまった(僕はそのお守りを今でもトラックに付けている)。「ありがとう」。
こうして僕はとうとう出発した。2003年春の、ある日曜日の午後の始まりに。