オンザロード6「唯一の決められた場所へ」

27歳を目前にした僕の現状は、仕事もなく、恋人もなく、手に職もなく、何ら資格もなく、住む家ももはやないに等しく(姪っ子達が大きくなり)、頭の中にあるものと言えば現実的には役に立ちそうもないガラクタや石ころばかり。そんな男が一人、旅へと出発した。
初めに隣町のショッピングセンターに寄って、ジャージを購入。寝巻用であり、そのまま外を歩けるためにとのジャージ。アディダスだったかな?
ああ、体調はやはりまだあまり良くはない。でも止まってはいられないと、再び出発。一つ目の目的地は決まっていた。山形県酒田市土門拳記念館だ。ただ、二つ目の目的地はない。そこからは手探りで行くだけ。大まかなビジョンとして、東北は全部一応は行ったことがあるので省いて、酒田市経由で新潟から廻ろうと。日本海沿いに進もうかなぁ、と漠然とは考えてはいた。東北、北海道(修学旅行で行った)、東京近辺(住んでいたことがある)、沖縄(いずれ行こうかと)以外は全部廻ろうと。日本を制覇しようと。
オデッセイは進んで行く。国道ではあるが、ある程度険しい山道を。この山を抜ければ、海が見えてくるはず。・・・・しばらく走り、ほら見えて来た。久々に見る海だ。あまり体調のよくない体の中で、一気に心が晴れ渡る。海はやはり、海であるだけでスゴイ。その存在だけでスゴイ。僕もそんな風になれないだろうか。僕が、僕であるだけでスゴイ。そんな男に。
国道を海沿いに流して、しばらく走った。そして最初の、そして初めから決められた唯一の目的地に到着。土門拳記念館。ここは僕が、一眼レフ購入頃から、ずっと来たかった場所だ。
記念館の前は大きな公園になっていた。僕は自慢の一眼レフカメラを取り出し、写真を撮る。公園を撮り、記念館の前のオブジェを撮る。中に入り、館内をゆるりと廻る。迫力の写真たち。その数々。・・・・・そして一つ目の目的地終了。・・・・・さて、僕は、どこへ行こうか・・・・。