オンザロード11「よく晴れ渡った能登半島制覇」

車を止め、坂道を歩いていた。能登半島最北端、そのてっぺんはもうすぐそこだった。舗装された道路を歩きながら、その横には畑があり、おばあちゃんが草取りをしていた。この道が坂道であるように、おばあちゃんが働く畑も、結構な勾配となっていた。僕も、おばあちゃんも、転げ落ちてしまわぬように地面をしっかりと踏みしめていた。
能登半島のてっぺんは気持ちよく晴れていた。禄剛埼灯台から見る景色は最高だった。そこには電力塔のようなものがあり、コカコーラのベンチがあり、最北端と記された目印が立っていた。風は気持ちが良かった。海は眩しかった。
登って来た坂道を今度は下りながら、今日の寝床はどこにしようかと考えていた。その前に夕飯は?、その前に風呂は?。
車はなんとなく南進しながら、夜へと移行していく空を見上げ、今日は風呂は無理かもと思った。輪島塗の里で少しだけ道に迷い、夜はさらに深まった。だが突然の温泉出現。その名もラドン温泉じんのびの湯、450円なり。旅をしながら行く先々の名物を食って来いと能登君は言ったが、僕の場合は行く先々の温泉を味わって来い、となりそうな感じ。僕は温泉が大好きだ。
その日の寝床は道の駅とき海街道。缶ビールを飲んで眠った。購入したクッションのおかげか、爆睡することが出来た。

地元の後輩に、チョット変わった後輩がいる。名前は仮に「コウタロ」としよう。小学校の時先生は、コウタロの頭には機械が入っているから頭を叩いちゃダメだと言っていた。当時は信じたものだったが、今思えば頭に機械が入ってる分けがない。だが真面目に先生が言うからには何か理由があったのだろう。確かに脇腹のところには手術でもしたような傷痕があった。それに機械でも入ってそうな奇妙な行動もよく取った。友達の家の犬を誘拐したこともあったし・・・・。このコウタロが、なぜか・・・・この旅の一つのカギを持っている(僕はまったく望んでいなかったが)。たいしたカギではないと言えばそれまでだが、それなりに僕に動揺を与えたカギだとも言える。ぜひ最後まで、彼のことを覚えておいていただきたい。頭の片隅程度で良いので。