オンザロード15「旅の序章が終わり本番が始まる」

丹後あじわいの里を歩いていた。広い敷地に花畑、時計台があり、馬車が歩いていて、まるで異国の雰囲気。僕はここのトイレで、大きな鏡に映った自分の姿を写真に収めた。その写真が今手元にあるが、そうかアレから十年か、写真の僕は確かに若い。この頃の僕に、今の僕は想像できないだろうな。
その後、久美浜温泉で風呂に入った。さて、今日の宿はどこにしようか。旅に出てまだ四日目くらいかな。もう十日も経ったような気がしている。毎日違う風景、それは僕の中の時計をゆっくり進ませる。相対性理論みたいな感じで、秋田に戻った頃には、友達たちはおじいさんになっていたりして。
旅に出てから極道の友達とは数回メールをしていた。運転のこととか心配してくれている様子。能登君からは電話が一回。どこまで行った?みたいな感じの電話。あと隣の村に住む気球好きの友達とも数回メール交換した。彼は気球の免許を持っていて、日本で初めて気球免許の免停になったという不名誉な記録を持つ。ドラクエみたいに気球で旅が出来たら素敵だね、なんてメールしてた。そして車にスモークを貼ってくれた友達とも一度だけメールをした。内容は忘れてしまったけれども、多分どうでもいいようなことだったと思う。何はともあれ、あの人達は今もいつもと変わらぬ日々の中。普通の毎日。僕だけが特別な時間を生きていた。
明日からは、本当に行きたかった場所の連続となる。序章は終わり。本番が始まる。
デパートに入り、食品コーナーで晩飯を買う。閉店も近く、半額となっていてお得。その後、空き家となっているらしいスーパーマーケットの駐車場を見つけ、そこで眠ることに。さあ眠ろう。明日からはとうとう本番が始まる。