オンザロード20「山口県で若者30名に囲まれる」

道の駅長門峡は崖の上にある、といった感じかな。通っている道路も峠道だし、周りにはほとんど民家もなかったと記憶している。まさにこれぞ道の駅といったところか。
道路から見て左側に道の駅の建物があり、真ん中に大きな駐車場、そして右端にはポツリと、なぜか野外ステージがあった。僕はその野外ステージの横に、車を指し込む形で止め眠ることに。それにしても山の中の闇は深く、車の中にいると言えど気持ちが悪い。熊でもでそうな、ユウレイだって出かねない、そんな薄気味悪い闇の中だ。
僕はカーテンを引き布団に入る。少しして睡魔に襲われ、ウトウト闇の中で眠りについた・・・・が僕は起きた。なにやら意味不明の喧騒、チラつく灯り。スモーク越しに外を見ると、なんとステージを囲む形で若者たちがズラリと、30名は超えていると思われる。何が始まったのかと身構える僕。確実にやばい雰囲気。兄貴から渡された警棒の位置を確かめ、再び外を注視する。何人かの若者がステージの上へ。「俺達、○○○だぜ、ヨロシク」と声を張り上げると、ステージを囲む若者たちの間から歓声が上がる。次にまた別の若者たちがステージの上へ。同じように声を張り上げる。「どうも、俺らは○○○だー。盛り上がって行こうぜ」。僕の車はそのステージのすぐ横にあった。非常にやばい。しかも山口県に秋田ナンバーの車。不自然すぎるし、彼らは確実に興奮した若者30名であり、ここは深すぎる闇の中の無法地帯とも言える。脇から汗が流れるのを感じる。マジでやばい。どうしよう・・・・・。僕は警棒を伸ばし、キャッシュカードをシートの下に隠す。はぁーマジでヤバい。新聞の見出し「秋田からの旅人、山口の闇に死す」。ありえなくもない30名からのリンチ。闇に引きずられるように思考はネガティブへと。どうしよう・・・・。
とその時彼らの中の一台の車が走り出し、そしたら次々に皆車へと乗り込み、あれよあれよと言う間に30名はいなくなってしまった。僕は全身から力が抜けるのを感じた。
そうか、今日は土曜日か。若者たちが家でじっとしている分けがない。そして道の駅はそんな若者たちの、集合場所には最適なのだった。もしもあの30名の中の一人でも、「秋田ナンバー車だぜ」なんて発したならば僕はヤバかったかも知れない。いや、確実にヤバかった。
今回は何事もなく過ぎ去った危険。しかしこの先兄貴から渡された警棒を、使う時が来るのかもしれない、旅は何があるか分からないから旅。