オンザロード44「九州経由倉敷行き」

千光寺公園を歩きながら、眩し過ぎる朝の光りの粒子を深呼吸して肺いっぱいに吸い込んだ。文学のこみちを歩きながら、僕は文学のことを一ミリメートルも思いはしなかった。眼前にはサルがいた。サルを見たいと求める老人とすれ違ったが、彼は逆方向へと歩いて行き、帰路を行く僕がサルと出くわす人生の奇怪。それがまさに人生であるのだ。ところで「ワースト」の五巻を買った僕は、今からそれをここで読みたいと思う。
その後、尾道の街を歩いた。映画で「転校生」で有名な、そしてその他にもたくさんの映画が撮影されている街。さすがに雰囲気ばっちり。ただ、普通にここで生活がしている人々がいる分けで、観光客はやはりマナーを守らなければならないだろう。そんなマナーを守らない人たちのせいで、「タイル小路」は廃止されていた。残念。
そして倉敷の街へ。鳥取で会った若者二人のことを思い出す。倉敷から鳥取砂丘へと来ていた彼らは「倉敷にも来てください」と僕に言った。あれから何日が過ぎたのか。鳥取から南に下ればすぐに来れた街であるのに、僕はいったん九州に入りそこを周遊してからここまでやって来た。遠回りして、それでも僕は彼らに答えたようにこの街にやって来た。
それにしても良い街だ。尾道は生活感溢れるナイスな雰囲気、ここは作り上げられた生活感のないナイス雰囲気、それはどっちも素敵だったが、まったく非なるものであった。大原美術館も入館料1000円と高めだったので入るか迷ったが、入って良かった。僕はいつもお金を払う時に迷うけれども、入った後、買った後、後悔することはまずない。だから入り、買うべきなんだろう。それでも迷う僕の気質は、一生もんだろうなぁ。