オンザロード50「香川を地味に旅する」

善通寺空海が生まれたとされる場所だ。映画で観た白い服に身を包んだ人々がお参りをしていた。四国を廻るあの参拝と思われる。
その後に来たのが、浦島太郎が竜宮城へ消えたとされる、あの海。のどかな、のどか過ぎる海。この浜辺で亀を助け、その亀に連れられて乙姫様のもとへと行った分けだが、あの話は何を暗示しているのだろうか。ブラックすぎるような気もするし、ファンキー過ぎるような気もする。どちらにしても、子どもに似合う代物ではない、本当のところ。
昨日は宮本武蔵の里へ、今日は浦島太郎の海。宮本武蔵は実在し、浦島太郎は架空の人物であるわけであるが、僕にとっては遥か向こう、どちらも伝説の人物であるだけだ。
続いて琴弾公園へ。ここの展望台からは銭形の砂絵が見えるのだが、正直特になんとも思わなかった。ただ、季節はまだ五月に入ったばかりであるのに、頭上では蝉が激しく鳴いていた。僕はそっと目を閉じて、その音に耳をすませた。
また少し移動。豊稔池の石積アーチダムに来た。これは日本最古の石積アーチダムであるらしい。確かに良い雰囲気を醸し出してはいるが、観光客は少ない。家族で弁当でも食えば楽しそうな場所だ。
と、ゴールデンウイーク初日にしては、何とも地味な場所を廻っている感じ(善通寺は早朝から賑わっていましたが)。どれも、ささやかな観光地といった場所。しかしこの後向かった場所は大変込み合っていたし、それに辿り着くまで鬼のように難儀した。現代日本において、これほど過酷な道のりがあるんだろうかというほどに。もちろん車での移動。すれ違えないような細い道の、急勾配急カーブが、果てしなく続いた。どこまでもどこまでもどこまでもどこまでも、それはどこまでも。僕が目指したのは、日本三奇矯の二つ目、かずら橋だった。