オンザロード62「ともやま公園の夕日を待つ」

入った温泉は海沿いにあり、温泉というよりかリゾートホテルを小さくした感じの、とても雰囲気の良き場所だった。そのあと僕は海沿いに車を南下させた。
鳥羽展望台に上り、そこから太平洋を見下ろした。波が強く、水平線は実に曖昧に揺れていた。時はゆるりと流れながら。
次に大王崎の灯台から太平洋を見下ろした。そして思った、僕は翼のない鳥であると。この島国はカゴであって、僕はそのカゴの中をチマチマ歩き回っているに過ぎぬと。もちろん歩き回ることも重要であって、けれどもいつかは翼を持ち、いつかはこの海を飛んでみたい。坂本龍馬はこの海の向こうに想いを馳せた。彼には翼があったし、そして僕には翼がない。・・・・その翼を手に入れる以外は、もう何にもなりたくはないんだ。まるでヘルマン・ヘッセのように。
この旅で一番のんびりと流れた一日の、その最後はともやま公園にいた。ともやま公園にいて、日が暮れるのを待っていた。ここは夕日の名所。プロのカメラマンと思しき人も撮影に来ていた。ここはそれほどの場所であるのだ。だが、日はまだ大分上。僕はヘッズの一巻を読みながら、遠藤周作のイエスの生涯を読みながら、夕暮れを待った。

その少し後、僕は、最高の夕日、最高の風景に包まれた。