オンザロード74「軽井沢ノスタルジー」

その日は朝から雨が降っていた。憂鬱な音を立てて。
雨が降る中、車を走らせる。やってきた場所は旧中込小学校。かなり昔の、確か大正時代とかの小学校だったような気がするが、それが今一般公開されているもの。なつかしい、あれもこれも、なつかしい。僕はノスタルジックな気分になるも、ここの世界は僕が生まれるずっと以前のものであることに思い当りハッとする。僕が故郷を思ったものは遺伝子レベルであったのか?いやいや、そんな大袈裟な。
そしてあの軽井沢へ。旧軽井沢の銀座を歩いた。シルバーリング店でいいのがあったが買わなかった。それにしてもいい感じの店がズラリと並んでいた。聖パウロカトリック教会で、僕は初めて中の写真を撮った。今まではなんとなくその行為が憚られていたが、これまたなんとなくではあるが、そこでは自然と写真機を構えることが出来た。そして十字架の前まで歩いた。
旧三笠ホテルへ。それは別荘地の中にあった。軽井沢と言えば別荘。芸能人や著名人の別荘がたくさんあるイメージだ。ここではまるで、アパートの部屋を区切るように別荘を管理していた。旧三笠ホテルは見事に豪奢なホテルだった。金田一少年の事件簿の撮影にでもピッタリといった場所だった。
軽井沢を抜け、少林山だるま寺へ。静かな場所にそれはあった。星の数ほどの石段。数えても途中で見失ってしまいそうはほどの星の数々。疲れた足に滲みた。でも僕は歩くのが大好きだ。
星の数を数え終えると、目の前にはこれまた星の数ほどのダルマ。僕はもう星の数を数えはしなかった。