オンザロード79「日光東照宮にて一人ぼっちの僕」

尾瀬の疲れがこびり付いていた。そしてそれ以上に強烈何かが僕を支配していた。雪に閉ざされた尾瀬沼の風景。十年近い時が経った今でも、はっきりと思い出せる。目を閉じれば、あの場所に僕は再び存在できるかのようだ。
その後、中禅寺湖を目指してきた僕。でも、何かが変だ。どうやらここは湯ノ湖であるらしい。やれやれ。疲れているのか、いや、僕の大部分はまだ、尾瀬沼にいるままなのだ。僕はとりあえず缶コーヒーを買って飲んだ。
そして戦場ヶ原へ。ここも太古昔、湖であったらしい。だんだんと水がなくなり野原になったと。でも、それほどの感動もなく、僕にとってはただ野原であるだけだ。

日光東照宮。素晴らしき建物の数々。ここは世界遺産であったはず。確かに素晴らしい。観光客もかなりいた。広い敷地に、どこに行っても人、人、人、人の群れ。そんな中にいても、僕は一人ぼっちだった。日光東照宮にいて、観光客の波に埋もれながらも、僕は一人。まるで尾瀬へと歩いているかのようだった。もう少しで、そこに、辿り着きそうなほどに。
霧雨の降る日光東照宮。でも僕は、そこには半分しかいないかのよう。もう半分は、まだ尾瀬沼のほとりに座り込んでいるかのように・・・・。