オンザロード83「ラストシーンへの道への半年間」

高校を卒業して、地元の電話工事の会社に就職した。そこを半年で辞めて、僕は上京することにした。ただ上京とは言っても、とりあえずは半年間の出稼ぎという形だった。それが終わったらその後のことはその時に考えようと・・・・。それで、友達と東京へ・・・・と言うつもりだったが、なぜか僕達は埼玉県八潮市にいた。父の紹介で、高校生の時に来たあの資材置き場で働くことになったのだ。あの時泊まった宿舎で、僕達は半年間を過ごすこととなった。
そこには秋田出身の親方がいた。訛りがひどく、僕達でもいまいち聞きとれないほどだった。そしてサトサン。とにかくいつも冗談ばかりを言っている人だった。そしてトササン。この人も秋田出身で、トレードマークにヒゲをはやしていた。そしてフジサン。俳優でもやれそうな雰囲気を持つ、シブい人だった。そしてスズサン。怪しい人ではあったが、色々と面倒を見てくれた。そしてジョン。フィリピン人で、今度フィリピンに来れば、マリファナを吸わせてやると言っていたが、あまり興味がなかったなぁ。そしてササキチサン。山形出身で、調子のいいネズミ小僧のような男だった。あとパートのおばさんが三人ほどいた。僕と友達はそこで働いた。出稼ぎとはいっても、高校出たてということでアルバイト扱いみたいになり、日に7000円位しか貰えなかった。それでも僕達はもくもくと働いた。
近くにファミリーマートがあり、毎日2回位はそこに行った。高校生のアルバイトの男の子はいつもダルそうに働いていた。
隣りの三郷市の街を歩くと、高校生の頃に来た時の記憶が走馬灯のように頭の中を流れた。あの旅行の記憶は、まるで昨日のことでもあったかのように新鮮だった。ああ、タイムスリップて可能なんだな、なんてしみじみ思ったものだった。
そこでの半年間、色々なことがあった。一緒に生活する友達と喧嘩になり、馬乗りでペットボトルのジュースを頭からかぶせたり、スズサンと研究していた競馬の予想方法は後に本になったり、エトセトラエトセトラエトセトラ。まぁ色々ありました。
半年が経ち、忘れもしない4月13日夜、冷蔵庫から、テレビからたくさんの荷物を詰め込んだスカイライン八潮市を発った僕達。その日はなんと秋田は大雪で、僕達は家到着目前の山道で、スリップして雪壁に突っ込んだ。幸い無事だったが。