オンザロード89「旅のピースは半分完成、もう半分はいつか誰かと」

旅が終わり翌日、旅先で記してきた日記帳を読み返してみた。初日から順番に。でも・・・・僕は旅のことをうまく思い出すことが出来なかった。あんなにも新鮮で、あんなにも強烈な景色と日々の数々を・・・それはとても不思議なことに思えた。しかも旅は昨日までずっと続いていたのだ。何年も前の話ではない。机に座り、日記帳を読む。僕は旅のことを、うまく思い出すことが出来なかった。
けれども僕は・・・・ある瞬間、鮮明に思い出した。旅のことをリアルに、確かな温度を持って。それは・・・・車に、サルパラダイス号に乗って走り出した時だ。車を運転しながら、流れる風景が走馬灯のように流れる思い出の場面へと変わった。こみ上げてくる熱いものを感じながら、僕は旅の日々を思い、まるであの日々の中にいるかのようだった。音楽は、旅の間ずっと聞いてきたヤエコのキャンダライズ、握るハンドルはサルパラダイス号、運転手は旅人は詩人はロッカーは主人公は僕。またいつか旅立ちたい。僕は強く願う、心に。またいつか旅立ち、旅を完成させたい。この旅、僕が感じていたのは、日本を回るオンザロードの旅は一旦終わったものの、それはまだ半分が終わっただけということだった。もう一度同じように、そしてもう半分のピースを埋められる。その旅はきっと誰かと。丸い地球を平面に変化させながら。

その数日後、僕は友達の運転する大型トラックに乗って、横浜本牧へと来ていた。横浜ベイブリッジの見えるA突堤で、エンジンの音を枕にして眠ったんだ。ドライブインで生ビールを飲み、トラックステーションでは風呂にも入ったんだ。そして僕は移動するトラックの中で眠った。僕はもう携帯電話の液晶画面に映るデジタル時計以外の時間は見失っていた。何かは老けこんだが、また別の何かは生まれ続けているかのようだった。明後日にはまた、僕は僕のルーツを探すべく神奈川へと向かう。今度は新幹線だ。