日本に生まれて良かった、日本には友部正人がいるから

友部正人の歌を初めて聞いたのは、夜の海岸線に止めた車の中だった。波の音が夜の不安を煽るような、そんな暗闇の中だった。「にんじん」というアルバムだった。何たるタイトルだろうか・・・・。
衝撃を受けた。それはもしかしたら初めてブルーハーツを見た時のような、それは大分昔のアルバムであったが、新しかったなぁ。
僕はじっくりと聴いた。僕はしんみりと聴いた。僕は泳ぐようにその歌を聴いた。僕は沈み込むようにその歌を泳いだ。なんなんだこの歌は・・・凄過ぎるぜぇ、と当時の僕はなった分けです。友部正人の歌を知らないということは、それは一つのささやかな不幸に思える。ささやかだけれどもある種、決定的な不幸。みなさんにも一つのささやかな幸福が訪れますように。それはきっとあなたの中に何かを生み出すだろう。

僕が友部正人を知ったのは、真島が彼の影響を受けていると聞いた時だった。歌でも本でもであるが、敬愛する誰かが聴いたり読んだりしているものは、まず外さないものだ。僕が友部さんを知ったのは大人になってからだったが、実は真島のソロアルバムに収録されている「地球の一番ハゲた場所」は友部さんの歌で、そんなことも知らずに僕はその歌を聴いていた。当時は歌詞の意味なんて良く分かんなかったけど、今聴けば素晴らしくメルヘンな、そしてファンタジックな、そしてノスタルジックな、大好きな一曲です。「僕らは古新聞を指揮棒にして冬の星座に歌わせた」って歌詞とか大好きっすねぇ。子供の頃に見上げた吸いこまれそうな満天の星空を思い出すぜぇ(今では満天の星空にもなかなか吸い込まれそうにはなりません)。ただ、正直この曲より素敵な曲がたくさんあります。

友部さんは若かりし頃アメリカのバーで、多分入れ墨とかガンガン入ったような奴らが呑んだくれているようなバーで、ギター一本で日本語で歌を歌っていたとか。それは、恐ろしくもカッコいいなぁ。